2025 05,16 14:27 |
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2011 10,17 17:35 |
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その日、あの無敵の暴れん棒将軍が沈んだ。 あれほどまでにショックのあまり思考が停止し、魂が抜けたように呆然と立ち尽くす人を、私は見たことがない。しばらく経ってその場から静かに離れてゆく彼の背中は、見たことがないほど小さく、周囲の空間はセピア色に彩られているように感じられた。そこに誠意大将軍の面影は全くなかった。 2011年10月吉日。我らが同期の中でも飛び抜けた有望株である徳田君と、彼の筋金入りの追っかけであるなっちゃんの結婚式がめでたく執り行われた。喜ばしいかつ責任重大なことに、ハスキーズの負の遺産の称号を欲しいがままにする我らが12代が2次会パーティーの幹事を任されていた。そんな負の遺産プロデュースのパーティーに、誰も知らない、いやむしろ知るよしも無いサプライズが隠されていた。 パーティーはいたってノーマルなスケジュールが組まれていた。 新郎新婦入場→開会挨拶→友人による乾杯の挨拶→ケーキカット→プロフィール映像→余興×3→閉会の挨拶→新郎新婦退場 当日参加されていた人はこのどこにサプライズがカチ込まれていたか気づいたであろうか。ヒントは、あるタイミングで、パーティーに邪な出会いを求めて暴れん棒を振り回す誠意大将軍ことD-ROADのテンションがガタ落ちした瞬間である。 隠されたサプライズは、「友人による乾杯の挨拶」のパートであった。パーティーの2週間くらい前からおおまかなスケジュールは既に組まれており、それぞれの役割分担も割り振られていた。そして当初乾杯の挨拶は、「勇者モリンボによる今世紀最大の乾杯ポエム」が予定されていた。しかしそれから新郎新婦側とスケジュールを詰めていく過程で、乾杯の挨拶は彼らの中高時代の同級生にお願いする運びになっていたのである。そのような重大なスケジュール変更があったにも関わらず、スケジュールを組んでいたわしは担当者の変更を最後まで周知しなかった!!そして、その事実を共有しながら最後までモリンボa.k.a.D-ROADに教えてあげなかった徳ちゃんも同罪の鬼畜である!!!! 今世紀最大のポエムを披露すること前提で当日を迎えていたD-ROADは、ポエムを考えるのに前夜の午前3時頃まで眠れなかったという。そして彼なりに大変なプレッシャーを感じていた模様で、午前から行われた披露宴にて少量のアルコールでいたく悪酔いしてしまい、昼過ぎには尋常ではない赤銅色の顔色をしておりなんと披露宴中にお亡くなりになっていた。決して酒に弱くない彼にしては珍しい現象である。今回ばかりは高砂席の新婦の料理を貪り食う余裕も無かった模様である。 披露宴が終わり、パーティーが始まった。そしていざ本番がやってきた。司会のONAKASENAKA部長が、「続きまして乾杯の挨拶に移らせていただきます。」と語るだいぶ前から、我らがD-ROADは司会台のすぐ脇にて直立してスタンバっていた。その直前まで会場のソファでゴミのようにくたばっていた彼の顔は、一転して決戦を直後に控えた戦士のように凛としていた。覚悟を決めた男の顔をしていた。そして、ONAKASENAKA部長は言った。 部長:「乾杯の挨拶は、新郎新婦の中高時代の友人であるM氏にお願いしております。それではM氏、よろしくお願いいたします!」 その瞬間、D-ROADの顔面は壊滅的なまでに表情を失った。 しばらくの間、事態を理解できていない様子であった。とっくにM氏が乾杯の挨拶を始めているというのに、D-ROADは司会台のとなりでずっと直立不動であった。その間何度もわしの作成したスケジュール表(未更新)を読み返していた。そして最後まで司会からD-ROADが紹介されることは無く、何事も無かったかのように乾杯がおこなわれた。 壊滅的な顔面のD-ROADは、何かを悟ったようにイスに崩れ落ちた。彼の目は虚空をさまよっており、時折誰にも聞こえないくらい小さい声でなにやらブツブツつぶやいていた。すぐ隣にいた人の談によると、「せっかく知恵を振り絞って考えてきたのに、どうすればいいんだ…」と水泡に帰したポエムをいたく哀れんでいたとのことである。 しばらく放心状態で黙り込んでいたD-ROADは、誰にも話しかけることもなく会場の人混みに消えていった。 しかし、スケジュールを組んだわしとしてもさすがに用意してくるであろうポエムが無に帰すのはかわいそうだと思っていたため、内密に「必殺ポエムずらし」を予め仕込んでいた。会場もまだ温まっていないタイミングの乾杯挨拶ではなく、我々の余興であるところの「D-ROADのぐちゃぐちゃミッキーマウス」というクソ安い出し物で来客者にD-ROADが何者なのかを認知させた後で、ポエムの時間を用意してあげていたのである。(こちらもサプライズだけど。) 虎舞竜の『Road』をBGMにまんざらでもない様子でスポットライトを浴びたD-ROADは、「二人が出会ったのはStation、今日の二人はCongratulation」などという、韻を踏んでいるといっていいのかどうかもよくわからないゲロ安いHIPHOPポエムを炸裂させていたが、ポエムを詠う彼の顔は生き生きとして本来の輝きを取り戻していた。そして自信のポエムを詠み終えて完全に復調した彼は、その後ご満悦で会場にいた女子たちをたぶらかしまくっていた。(が、その様に強烈な嫌悪感を抱いていた馬場もとい石谷女史は、最後の切り札である「その人既婚者です」のカードを早々にきったため、彼は周囲の女子から読んで字の如くタコ殴りに遭っていた。やられて然るべき、とても微笑ましい光景であった。) そんな、お騒がせサプライズのよってアップダウンの激しい一日を過ごしたD-ROADであった。 PR |
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