2025 05,16 04:50 |
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2011 11,08 10:43 |
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ゲヴォさん宙吊り事件から1ヶ月。我らがホッケー部同期は今のところ1人も辞めずになんとかホッケー部を続けていた。猟奇的なモリタ君もすぐにやめるかと思ったら、案外練習に顔を出していた。中でもソヤマは上流階級の家庭出身であるので地味でイケてないホッケー部なんぞすぐに辞めてクラブ通いに染まってしまうかと懸念されていたのだが、みんなで引き留めていた甲斐もあってなんだかんだで続けていた。
ある日の放課後練習のため鳥カゴ(当時のホッケー部は権力が皆無であったためグラウンドを使うことを自主的に控えており、周囲の網が風雨による劣化でとっくに朽ち果てたハンドボールコートの中で練習していた。そのハンドボールコートが通称鳥カゴであった。)に向かっていたら、珍しくわしより早く練習している人がいた。よく見るとソヤマであった。彼はトリカゴの中心付近で少しおかしな格好で静止しており、パッと見では何の練習をしているかわからなかった。わしはすぐに練習の準備をして彼の隣に行ったが、それでも彼が何をしているのかはわからなかった。彼はホッケーのスティックの柄の部分をズボンの上からケツに挿入しており、「これ、気持ちいい」と言っていた。 わしは言葉を失った。 そんなこんなで6月の半ば、いきなり顧問より対外試合があると伝えられた。なんとそれは練習試合ではなく、いきなりのインターハイの県予選であった。わしは初の対外試合ということで武者震いした。 それからすぐの週末、我々は埼玉県でもかなり北部に位置する、県立皆野高校へと向かった。皆野高校は埼玉北部の山地の中腹にあり、最寄り駅から歩いて30分くらいかけて学校まで行くのが非常にしんどかった。最寄り駅は西武秩父線「親鼻駅」というところで、よく修学旅行とかで行く長瀞のすぐ近くであった。我々のS高校からでも片道2時間以上かかる、とにかく遠い場所であった。 いよいよ皆野高校の控え室に入ったところで、おかしなことに気がついた。ホッケーは11人でやるスポーツなのに、知っている顔は10人しかいない。後1人、知らない人がついてきていた。 監督よりスタメンが発表された。 FW アサクラ(2年)、わし(1年)、ドベ(2年/スキー部) MF ゼンポー(3年)、シコピュン(2年)、サワダ(1年) DF ソヤマ(1年)、コヤノ(2年)、ゲヴォさん(1年) SW ハタノ(3年) GK キムラ(2年) FWに、なぜか初対面のスキー部の人が入っていた。欠席者もいたため全体的に人数が少なく、我々1年生もかなりメンバーに入っていた。 初戦の相手は、今大会のホスト校でもある皆野高校。埼玉県には4校しかないのに、前年のインターハイでベスト4に入るという全国的にも強豪校である。 そして、試合が始まった。いや、それはもはやスポーツの試合ではなく、ただのジェノサイドであった。全国レベルの強豪を相手に、チームメイトに宙吊りにされガンジー状態の男や、選手の命であるスティックをケツに挿入している男などの集まりでしかない我がチームは、常にコートの6分の1で試合をしていた。もちろんその6分の1とは、自陣ゴール前である。彼らは練習のようにパスを回し、集団リンチのように強烈なシュートを放ってきた。ほとんどのシュートは1発でゴールに入ってしまうのだが、GK・キムラが奇跡のファインセーブをしても、なんと彼はゴールキーパーの防具を装着した状態では1人で立ち上がれないというとてつもないオプション能力を備えていたため、チームメイトがディフェンスを放棄してキムラを起こしている間に次なる無慈悲なシュートを叩き込まれたことは言わずもがなである。そうして試合開始から地獄のような時間が過ぎていった。 そして試合も後半に入ったところで、事件は起きた。試合中にも関わらず、グラウンドの中央でソヤマは靴紐を結ぶのにえらく手間取っていた。あまりに手間取りすぎてスティックを地面に置き片膝を付いた状態で紐を結んでいると、皆野高校の選手によるシュート性の鋭いパスが、狙ったか狙ってないのか不明だが、一心不乱に靴紐を結ぶソヤマに直撃。ほどなく彼はインジャーリーで退場した。 ただでさえキビシイ状況の中、人数が11対10になるハンデを背負うという鬼畜のような追い討ちもあり、結局試合は28-0で終了。試合は35分ハーフなので2,3分に1点のペースである。失点してからセンターラインまで戻って試合再開するまでの移動時間も考えたらもっとハイペースかもしれない。ボールポゼッションは97:3といったところであろう。しかもその3%のほとんどの時間は、スキー部のドベさんによるドリブルの個人技によって稼いだ時間であった点というのには驚きである。 28-0という記録は、埼玉県のホッケー史上の最多得点とのことで、歴史が塗り替えられた瞬間でもあった。その場に居合わせることができたことはとても光栄である。ちなみに普通のホッケーの試合の点差はサッカーとさほど変わらず、3点もとれば大量得点である。 そして、その試合を最後に、ソヤマはホッケー部から去った。 PR |
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