2025 05,16 00:18 |
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2011 11,07 16:05 |
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わしは大学に入るまで人生が楽しくなかったので脳が勝手に高校までの記憶を消去しようとしているが、高校卒業から約10年経った今から当時を振り返ってみると、今となってみればそこそこおもしろいネタがあることに気づき始めた。備忘録的な意味も含めて振り返ってみようと思う。
埼玉県にあるS高校に入学したわしはホッケー部に入部した。数ある運動部の中でなぜホッケー部(しかもアイスホッケーではなく、グラウンドホッケー)なのかというと、ホッケー部は新歓で『埼玉県ベスト3保証』と謳っており、新たにスポーツを始めるならそこそこ強い部がいいなと思ったからである。そしていざ入部して県予選に出場すると、埼玉県内にホッケー部はS高を含め4校しかなく、更にそのうちの1チームは人数が足りず廃部寸前だという背景を知らされたときには時既に遅しであった。 ホッケー部の同期は当初5人いた(卒業時には2人になっていた)。スウェーデン帰りのアニメヲタ・サワダ、素行がうさんくさいソヤマ、猟奇的なモリタ、そしてゲロっ吐きのゲヴォさんである。ひたむきにスポーツに打ち込むような性格の男は1人もいなかったことは疑いようもない。 入部してから1ヶ月くらいたったころ、放課後に練習のため部室に向かうと、普段特に仲がよいわけではないモリタ君とゲヴォさんが、不自然なほど近い距離で向かい合って立っている。歩いて近づいてゆくと、どうやら様子がおかしい。普通に向かい合ったら身長はモリタ君の方が高いはずなのに、そのときはなぜかゲヴォさんの方が30cmくらい高い位置からモリタを見下ろすような格好になっていた。 ん??? もう少し近づいたところでわしは事情を理解した。猟奇的なモリタ君は右手一本でゲヴォさんの胸ぐらを掴み上げており、地面に足のつかないゲヴォさんはその名の通り宙吊り状態であった。 紅い夕陽の差し込む部室前で、学ラン姿のゲヴォさんがまるでガンジーの如く無抵抗に吊るし上げられている。ちょうど光の具合でゲヴォさんに後光が差しているように見えたその様は、印象派の画家が描いた鮮明な絵画の如く、今でもわしの脳に深く刻まれている。 と、このままだとゲヴォさんは間違いなくサンドバックになるので、別にゲヴォさんはどうなってもいいのだがわしはこの事件によって関係者として先生に怒られるのが嫌だったので、やんわりとモリタ君を制止してみることにした。 わし:「モリタくん何してるんだい?」 モリタ君:「こいつムカつくからぶん殴ってやりてえ」 わし:「はは!どこがムカつくんだい?」 モリタ君:「こいつの目つきが気にくわねえ」 わし:「ははは、確かに!けどまぁ今回のところは勘弁してあげてよ」 モリタ君:「わかったよ、でも次は許さねえ」 あからさまに猟奇的なモリタ君は意外と従順にゲヴォさんを解放し、当然その後の練習に参加することもなく帰っていった。 晴れて地上に降り立ったゲヴォさんは、パンパンと学ランの掴まれていたあたりを手で払いながら言った。 ゲヴォさん:「ふぅ、僕は暴力がキライなんだよ」 その顔面の完成度たるや、例えるならQBのポニョが自陣エンド内からの一投目でキャラハンを喰らった後に見せたドヤ顔をはるかに凌ぐクオリティーといっても過言ではなかった。 モリタ君の言っていた「目つきが気にくわねえ」というのはこのことだったのかと、嚇怒の余韻はわしにも伝わってきた。しかしわしはモリタ君と違って事なかれ主義のため、別に彼を宙吊りにしてみようとは思わなかった。 そんな、高校1年生の5月のある普通の日の放課後。 PR |
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