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2017 12,11 20:28 |
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「ご主人様、お帰りなさいませ!」
尾中部長、エマ、わし、アスカの4人は非日常空間へと足を踏み入れていた。
アルティの同期で元中京、現ルイーダのエマが珍しく東京にやってくるというのでエマを囲む会と称して飲み会がセッティングされたのだが、顔面の迫力が金城武級という鬱陶しさを誇る尾中部長の巧みな話術による誘導によって、いつの間にか会はおかしな方向性へと導かれていた。
秋葉原にある某雑居ビルをエレベータであがると、扉が開いた瞬間、荘厳な装飾が施された宮殿のエントランスが眼前に広がった。その宮殿のご主人様は永らく不在だったとのことで、久々に帰城したご主人こと我々に対して、しもべのメイドマリオネットが「ご主人様のお帰り!」とばかりに嬉々として出迎えてくれた。
そう、 いわゆるメイド喫茶である。
その名は『ロストキングダム』。我々はメイドマリオネットのなぎさちゃんに丁重にお席へ案内された。
席にて、なぎさちゃんの操作する手人形の『熊のオカダ(←なんか聞き覚えがある気が・・・)』からロストキングダムのシステムについてひと通り説明を受けた。メニューは1時間単位の席フィーに、ドリンク代とかが注文ごとに追加されていくというものであったが、メイド喫茶ならではのメニューも一部存在していた。せっかくのエマを囲む会なので、我々はそれらの特殊メニューをオーダーしてみることにした。
◆『真夜中のロンド』 メイドマリオネットとゲーム(キングダム的な世界観のあるゲームではなく、小型のワニワニパニック等の庶民的なゲーム)を5分間楽しむことができる。 →尾中部長がオーダー。ドブなような5分間をエンジョイし、1500ロスト。(1ロスト=1円)
◆『聖堂の肖像画』 メイドマリオネットと2ショットでチェキ撮影&チェキにメッセージもらえる。 →エマがオーダー。まんざらでもない笑顔のために、1500ロスト。
◆『逆襲のマリオネット』 →給仕するマリオネットがご主人様に逆襲するという謎設定のもと、メイドマリオネットにぶん殴ってもらえる。しかもその瞬間を別のマリオネットにチェキで撮影してもらえる。周囲のヲタクたちの好奇の視線を浴びながらぶん殴られるという陵辱プレイのための料金は1500ロスト。尾中部長による達者なトークの誘導により、結局わしがオーダー。
ロンドと肖像画に関しては、マリオネットさんたちも想像の範囲内のビジネス対応であったので、逆襲に関してもぶん殴るとは言いつつも「ご主人様、にゃんにゃん猫パン☆」程度の破壊力なんだろうなとタカをくくっていた。わしは高校時代、地元の少林寺拳法の道場に通っていたため、人を殴る痛み、殴られる痛みを知っている。その経験から、素人が敵意の無い相手を全力で殴ることなどできないと理解していたため、そこまで凄惨な結末を想像できず、『逆襲のマリオネット』のオーダーを断固拒否することもなかった。
そして、メイドマリオネット・めいちゃんが目の前にやってきて、言った。
めいちゃん「往復でいくので、一発目ではあまり動かないでくださいね◎」
ビジネスメイドごときの殴打でへこたれるものか。
周囲のヲタクたちから「ウヘヘヘ、暴れるようなら僕がうしろから羽交い絞めにしておきますよ~◎ウヘウヘ、プゲラッチョ」と、逆にこちらが死にたくなるようなチャチャを入れられたのも、わしの決意を更に固いものにした。
めいちゃん「それじゃいきまーす◎」
わしは戦士らしく後ろ手に腕を組み、殴打の瞬間のめいちゃんの心の揺らぎを見逃すまいと、刮目してその目を凝視した。
そしてめいちゃんの左腕が振りかぶられた。
おや、猫パンにしては振りかぶりが大きい・・・?!
次の瞬間、手のひらという大きな範囲ではなく、ピンポイントの掌底が右の頬骨の下から左45度上に抉るように打ち込まれた。
ガン!という鈍い衝撃音と共に凄まじい衝撃が頭骨に叩き込まれたが、わしは己の誇りにかけてそこでのリタイヤから踏みとどまり、次の一撃に耐えるべく歯を食いしばり、目を見開いてめいちゃんを凝視した。
そこには左手の掌底を振りぬいた反動を利用して腰のためをつくり、既に右腕を高く振りかぶるめいちゃんがいた。
その目には、ご主人様をぶん殴ることに対して迷いが無いどころか一切の感情が宿っておらず、ただ自動的に目の前のキモヲタを爆砕するために最大の破壊力を右の掌底に込めることだけに最大集中するメイドの姿があった。ただ純粋に、必殺の一撃に向けて流れるように予備動作に移っていた。
来る!!!!!!
右手が利き手だったのだろう。
先に喰らった左手による頬骨をカチ上げるような掌底と全く同じ軌道だが、段違いに破壊力の違う一撃が左の頬骨下に叩き込まれた。
さすがに目を閉じてしまったのは武士の恥であるが、インパクトの瞬間、目を閉じた暗闇の中で赤い火花が散った。
まじか。
これは、ホンモノや。
わし「ありがとう。」
わしは大人になってから初めてではないかというレベルの勢いでぶん殴られたにも関わらず、極めて高度な技術が駆使されたクリーンヒットであったために痛みよりも尊敬の念が先行し、その見事な身のこなしに対して自然と感謝の言葉がこぼれだしていた。わしの心は明鏡止水の如く、清々しさに満ち溢れていた。
現金をロストしてメイドにぶん殴られて感謝を述べたとか、絶対に嫁に言うことのできないワードの羅列なのである。 (雷神打ち上げ当日編に続く) ↓オマケ・エマ PR |
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