2025 05,16 08:05 |
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2017 03,14 21:18 |
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俺は軽い二日酔いのなか、決戦の地、埼玉県越谷へと向かっていた。武蔵野線「越谷レイクタウン駅」を降りると、そこには越谷のコロッセオこと「イオンレイクタウン」なる、数多の戦士たちが名誉を求めて戦いを挑み、しかしながらそのほとんどが故郷に帰ることがなかったと噂される、禍々しい建築物が聳え立っていた。俺もこれから行われる未知の強敵との死闘を思い浮かべると、歩みを進める足には自然と力が入り、体が震えた。・・・、そうか、これが武者震いというやつか・・・。
コロッセオへ向かう途中で、今回俺とパーティーを組むケースケと合流した。俺のパーティーリストの中には偶然にもケースケという名前の戦士が何人かいるが、今回のケースケはそのなかでも特に「株に強い」という特殊能力をもつ。その特殊能力がこの後行われる戦いにおいて役立つかどうかは不明であるが、勇者を自負する俺が戦友に選んだのだから間違いない。これからは何があろうと一蓮托生である。これから開催される関東地区予選を勝ち抜き、勇者の地区代表から真の勇者を決めるべく開催される、聖地・秋葉原で行われる全国大会に駒を進めるべく、俺たちはコロッセオへと足を踏み入れたのであった・・・。
前日、俺とケースケは熱心に戦略を練っていた。もちろん翌日越谷で行われる関東地区予選に向けてである。お互いの持ち札を確認し、物理攻撃系でも魔法使い系でもどちらが相手となっても対処できる、考えうる最良の組み合わせを導き出した。幸いにも、我々の持つリソースも、その理想の組み合わせの実現を可能にした。全ての確認を終えた俺たちの口元からは、にやけが止まることを知らなかった。なぜなら、俺たちには明日、並み居る強豪を倒して、関東の勇者として勝利の美酒を浴びるように飲む自分たちの姿しか思い浮かべることができなかったからだ。
え、そろそろ俺が何の戦いに備えているか知りたいって?
それでは教えてしんぜよう。
俺が伝説の勇者となるべく人生の多くを賭けているもの、
そう、 「スマフォアプリ・ドラクエモンスターズ」!!!
毎日3時間、2年間欠かさずにコツコツプレイした総プレー時間、1800時間。 レアモンスターをGETすべく投入した課金額、200万円。
リアルでの職業・自宅警備員というアドバンテージを最大に生かした、圧倒的なプレー時間。 そしてコツコツと息子のご飯を盗み食いして浮かせた家計から捻出した、他の追随を許さない課金額。
負けるわけがない。
しかし費やした時間とお金は、社会的に俺に何も還元してくれない。
そんなことはわかっている。
ではなぜプレーを続けるのか。
全ての理由、
それは、
俺が勇者だからだ。
コロッセオに侵入した俺とケースケは、目的地であるイベントスペースへと到着した。そこには関東地区予選に臨む猛者たちがざっと見て300人。俺とケースケはふふんと鼻を鳴らした。どう考えても金銭的余裕の無さそうな学生や、金には余裕がありそうだが仕事をしていてプレー時間が少なそうなサラリーマン風の男。
時間と金で、俺たちに勝てる者などいない。
そう思うと、自然と気分が高揚し、圧倒的な優越感に支配された。目を閉じれば、そこには楽々関東予選を突破し、関東の勇者として聖地・秋葉原に君臨する俺たちの姿がはっきりと浮かんでいた。
そんなこんなしていると主催者により対戦カードが組まれ、俺たちの対戦相手も決まった。対戦の場となるブースに移動すると、これから俺たちにジェノサイドされる哀れな対戦者がのこのことやってきた。冴えない学生風の風貌が、一層俺の哀れみの心を煽った。可哀想に、家からここまで来るだけでもだいぶ時間がかかったろうに。試合に負けると即ドロップアウトという厳しい大会形式であり、敗者復活はない。せめてもの情けで、敗戦の悔いが残らないほどにボコボコに殲滅してあげようと心に決めた。
そして遂に試合開始の時間を迎えた。 俺のスマフォと、冴えない学生のスマフォがBluetoothで接続される。
いざ尋常に、勝負!!!!
10分後、俺たちはレイクタウンイオンから叩き出されていた。
あれーーーー?初戦敗退プレイ????
僕の1800時間は?僕の200万円は?????
その日をきっかけに、俺は心を入れ替えた。
課金はパズドラに充てることにし、今ではドラクエモンスターズは余りあるNEETの時間消費のため、無課金でのプレーに留めている。
そう、俺は勇者ドリンボ。 PR |
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