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2017 01,05 18:39 |
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学生時代にわしが所属していたハスキーズにおいて、“キング”と言われたら思い浮かべる人物は一人しかいない。
そう、キング秀美。
キングの由来はわしも定かではないのだが、ハスキーズ時代のキングのプレーを見たチームメイトが付けたのではないかと思われる。当時のハスキーズレディーはお世辞にもあまり強いとは言えず、ダイブができる選手もほとんどいない中、キング秀美だけは異次元の動きで圧倒的な存在感を放っていた。スローやキャッチが段違いに上手かっただけではなく、メンズ顔負けのエゲツないダイブを連発して一騎当千の活躍をしていたことを記憶している。そんなキング4年生のプレーを見たわしは、「すげー、あれがキングなのか~・・・」と純粋に感動すると共に、“クイーン”ではなく“キング”であることに妙に納得したものである。
そんなキング秀美はハスキーズ卒業後、社会人になってもアルティを続けられ、比較的参加しやすい東南アジアのローカル大会はもちろんのこと、アジア選手権、ビーチ世界選手権、世界クラブチーム選手権、世界選手権とありとあらゆる国際大会に出場して活躍されており、現在進行形でキングっぷりに磨きをかけておられる。
キングエピソードは試合中だけに留まらず、国際大会でのフリータイム中にも生まれているようで、夕飯のためにとあるショッピングモールに行った際、いきなりキングがウン十万円する腕時計を、まるでわしがコンビニでブラックサンダーを買う感覚でお買い上げになられたのだという。 驚愕したチームメイトがいきなりのお買い上げについてキング秀美に理由をたずねると、キングは言ったのだという。
キング秀美「理由?私は欲しいものを買うために日々働いている。ちょうど今、欲しいものがあったから買った。また明日から働いてお金を稼げばいい。ただそれだけのこと。」
あまりにかっこ良すぎてもはや都市伝説レベルのキング発言であるが、もしこれが事実であったとしても、キング秀美の発言であれば納得できてしまう。それくらい、キング秀美のキングの称号は確固たるものとしてわしの心に刻まれている。 同じかっこ良いでも“俺より強いヤツに、会いに行く・・・”と言ってポリスメンに会ってしまうのとは、訳が違うのである。
さて、そしてここに一人、同じくハスキーズ出身のキングの後輩で、そのキングルートを奇跡的なほどそのまんまなぞっている戦士がいる。
その戦士の名は、
そう、 さっこ
元祖キングのように派手なプレーは炸裂させないものの、しぶといストーリング、ディフェンスに存在感を悟られない忍者走り、ミート後の即ダンプ、献身的なおとりの合わせなど、カユいところに手が届く渋いプレーの引き出し満載のため、様々なチームから引っ張りだこでおなじみの、我らがさっこなのである。
「自分、不器用ですから・・・」と、名俳優・高倉健と全く同じセリフが口ぐせのさっこであるが、その経歴は華々しく、東南アジアのローカル大会、アジア選手権、ビーチ世界選手権、世界クラブチーム選手権、世界選手権と、こちらも七つの海をまたにかけて活躍している。
先のキング秀美に負けず劣らず、さっこにもキングに通ずる強力なエピソードがあると某絵門氏からタレコミがあったので、タレコミを元に、某絵門氏視点で忠実に情景を再現させていただく。
2015年9月の台湾での大会での話。決勝戦が行われるコートの周りには多くの選手たちが集まっていた。中には周囲にたくさんのユニを並べ、ユニ交換しようと声をかけている人もいた。
『ふーん、熱心に交渉しているみたいだけど、東南アジアの人はトレードが好きなのかなー』とか、『なんだよこのユニ、トトロとかのジブリキャラがゴリゴリにプリントされているではないか!!』とか、異文化を肌に感じながら歩いていると、彼らと同じようにユニ交換のお店を開き、圧倒的なオーラを纏って鎮座している一人の女性が目に留まった。
どこかで見たことある気がするなぁと目を凝らして顔を確認してみると、見たことあるレベルではない、さっきまで一緒にプレーしていたチームメイトではないか。
その歴戦の戦士のオーラを纏った女性とは、
そう、 さっこ
わし(某絵門)がビールを飲みながらチンタラ歩いて決勝観戦に洒落込もうとしている裏でも、努力の女さっこは気を緩めることなく、ユニ交換という戦いに身を置いていた。
ユニ交換に臨むさっこの表情はまるで阿修羅の如くであり、ダンナとミャンマーに行ったときに現地の学生に日本から女優が来たと大騒ぎになり、30分もの間、握手と写真撮影を求められた際に振りまいていたときの女優スマイルからは考えられない迫力であった。
↑ミャンマーの街中で突然始まった写真撮影会の行列に、まんざらでもない表情で対応する女優・さっこ(写真はダンナ・山P提供)
さっこの気合にいたく尊敬しているところに、おそらくシンガポールのチームと思われる青年が、さっこに声をかけた。わしは少し離れたところからその様子を観察していた。
シンガ青年「こんにちは、相談できますか?」
さっこ「いいわよ。」
シンガ青年「実は、ここに並んでいるユニではなくて、あなたが今穿いている短パンに興味があるのです。」
そのときさっこが装着していた短パンは、黒ベースにIKUのロゴと日の丸がプリントされているカッコイイものであった。シンガ青年も良いモノに目をつけるものである。
その問いに対し演技派女優さっこはあえて即答せず、古畑任三郎ばりの苦悶の表情と共に溜めに溜めて、言葉を搾り出す。その溜められた間によって、シンガポール青年の中でその短パンのプレミア感がグイグイ上昇していることが、その表情の僅かな変化から読み取ることができた。
シンガ青年「あなたの短パンと、私のユニをトレードしてもらえませんか?」
さっこ「・・・・・・・・・・・・・・、いいわよ、交換してあげる。」
溜めに溜められた間から察するにおそらくダメだろうと腹をくくり始めた矢先の、拍子抜けするほどのあっさりしたトレード成立。純朴なシンガポール青年は満面の笑みを浮かべて喜んでいた。間違いなく心の中でガッツポーズを決めていたことだろう。
シンガ青年「ありがとう、それではさようなら。」
さっこ「こちらこそありがとう。」
わしはあまりにあっさりしたトレード成立に、どこか違和感を覚えていた。七つの海をまたにかけて戦ってきた圧倒的な経験値を誇るさっこにしては、あまりにあっさりした結末すぎる・・・。
わしはそんな疑問を抱きながらさっこを観察していると、なぜかさっこはトレードしたユニを、元々着ていたユニの上に着始めた。
わしの疑問は、確信に変わった。
さっこ「ちょっと待って。」
シンガ青年「何ですか?」
さっこ「今トレードしてもらったユニを着てみたんだけど、どういうわけか短パンが足りなくなってしまったみたいなの。下に穿くものが無くて、私はこれからどうやって街のホテルまで帰ったらいいのかしら?」
シンガ青年「!!!!!??」
先ほどまで阿修羅の気迫でトレードの店番をしていたさっこは、黒短パン1枚と交換した上下セットの白ユニに身を包み、満足げな微笑を浮かべて店番を再開していた。
その少し後ろで純朴なシンガポールの青年は、虚ろな目をして、決勝のコートとはあらぬ方向へ蛇行しながらトボトボと去っていった。こちらからはちゃんと確認することができなかったが、日本の大女優の底力を思い知った青年の目元は、台湾の西日を浴びていつも以上にキラキラと輝いていたに違いない。
キングの称号が襲名される日も、そう遠くないのかもしれない。 PR |
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