2025 10,16 02:01 |
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2007 02,04 09:51 |
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わしには爺さんがいて、今だに健全である。
この爺さんにはなかなかそこそこの伝説がある。
幼稚園くらいの頃、三輪車で崖から落下したことがあるらしい。
小学生くらいの頃、兄弟でチャンバラをしていて左手の小指が5mmほどスッ飛んだらしい。
中学生くらいの頃、通過駅で普通に走行中の電車から飛び降りたらしい。
大学生くらいの頃、イケメンだったらしく、街で映画出演のスカウトを受けたらしい。(現在はハリウッド俳優のジーン・ハックマンに激似)
これだけ聞くと若い頃はやんちゃだったんだなぁという印象を受けるが、その割に昔は喘息持ちで細くて白かったとか言っていたりしていて、謎に包まれた部分も多い。
そして皆の爺さん然りだと思うが、物資の充実した現代においてもほとんど全てのことをテクノロジーに頼らず我流の戦法で切り抜ける。
我流の戦法は本をたくさん束ねて縛ったりする方法や、かばんなどが少々壊れてしまったときの応急処置など、物質的にちょっと困ったときの対処としては絶大な威力を発揮するが、中には応用してはいけない分野もある。
その代表的なものとして医学が挙げられる。
爺ちゃんによる我流医学の魔手は少年時代のわしに降りかかっており、まさに知らぬが仏という言葉が当てはまる、今考えればぞっとするような体験が思い出される。
例えば、わしは幼稚園から小学校にかけて、歯を抜くために歯医者に行ったことがない。
周囲の人たちは盛んに歯を抜くために歯医者に行ったトークに華を咲かせているというのに、わしは常に放置Pだった。
余談として、わしの放置P症候群はその頃の経験がルーツになっているのではないかと推測される。
しかしあまりにも少年だったわしは「歯を抜くために病院に行かなくちゃいけないなんて、麻酔とか注射したとか言ってるし痛そうだし、みんなかわいそうだなー・・・」と思っていた。
そんなわしはどんな方法で歯を抜いていたかというと、まず食事中などに「歯が抜けそう」という話をすると、しばらくして爺さんの部屋に呼び出される。
そして爺さんの部屋に行くとおもむろに「上を向いて口を開け」と言われる。
言われるがままに上を向いて口をあけていると、爺さんは盆栽等で使用している工具箱から小型ペンチを取り出し、抵抗する間もなくぐらぐらしている歯をぶち抜くのである。
まるでコンセントからプラグを勢いよくぶち抜くかのように、ペンチで歯をぶち抜くのである。
ガッッという一瞬の衝撃の後、爺さんの「終わった」という一言でこの儀式は終了する。
歯医者と違ってこの儀式は本当に一瞬で終わるのだが、儀式の後の2時間くらいの大出血は避けられない。
世間とテクノロジーを知らない少年だったわしは全ての歯をこの方法で抜いた。
もし別の歯を誤ってペンチで引っ張ってしまったら大惨事だろうなという想像は易いが、もちろんそれも経験済みである。
これは新種の処刑法なのかと思われるほど痛かったことを今でも覚えている。
まだおじいちゃん医学話はある。
無邪気に歯をぶち抜かれていた時代と並行して、わしの少年時代は外をかけずりまわることしか脳がなく、高いところから飛び降りてみたり、全力ダッシュでコンクリートにダイブしてみたり、自転車で爆走し有刺鉄線に飛び込んでみたりと、正に生傷製造マシーンであった。
ちょっとした怪我は日常茶飯事で慣れっこだったため放置なのだが、ちょっとこいつは放置はまずいなという怪我を負ったときは、自らおじいちゃん外科にかかっていた。
なぜならおじいちゃん外科ではどんな傷にも効く特効薬を投与してくれたからである。
それは成人になった今でもわしにとって入手が困難であることから、よくもこんなものを見つけたものだと感心に値するものであった。
そんな奇跡の特効薬は、灰色の粉末であった。
それは高温にも耐えられるガラスの皿に入れられていた。
そしてなぜか毎日ちょっとずつ増えていた。
そう、灰色の万能薬の正体は、たばこの灰であった。
わしは比較的大きな怪我をすると自ら爺さんの部屋に行き、「薬つけて」というと、爺さんは迷うことなく傷口にたばこの灰をぶっかけてくれた。
灰をぶっかけた瞬間は怪我をした瞬間よりも遥かに大きな痛みを伴い、そのしばらく続く強烈な痛みによって怪我の痛みを忘れさせてくれるという、ある意味麻薬的な脳の思考回路コントロールを応用した治療法である。
ダイブ傷にアンダーアーマーが張り付いてその後のペリペリも相当痛いものだが、この傷口にたばこの灰療法は現代人は誰も思い浮かばない代物であろう。
確かにこの治療法は傷口の乾燥が早く治りも早い(??)という利点があるが、強烈な痛みとともに一生消えない痕が残るかもしれないというリスクも伴う諸刃の剣であるため、キズパワーパッドの量産される現代において試す価値は微塵も無いことを忠告しておく。
わしの体には今でも数箇所たばこの灰療法を実践した勲章が刻み込まれている。
現代でも男らしい我流の戦法を繰り出し問題を解決する人は、男でも女でも素敵なものであるが、ある程度の知識を持ち合わせていないととんでもないことになる可能性もあることを忘れないようにしましょう!
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