2012年2月の第二週に関東オープンが熊谷にて開催され、我らが堂道ベッカムブラピデカプリオキャプテン率いるベジも出場した。0℃に近い気温で寒風吹き荒ぶグラウンドでのアルティはそれはそれは過酷なものであった。しかし去年一昨年はこれに加え雪まで降っていたとのことなので、それに比べればまだましだったのかもしれない。
 
凍えるような寒さの中でのアルティで普段以上に体力を消耗した我々は、一刻も早く暖をとりたいとホテルへ駆け込んだ。今回の宿は普通のビジネスホテルであったため大部屋で雑魚寝ではなく、２～３人部屋が何部屋も割り当てられていた。
 
 
と、ロビーにてキャプテンより部屋割りの決め方が発表された。
 
 
 
 
ドリンボ：「部屋割りは背番号順で埋めていきまーす。」
 
 
 
 
 
 
 
それはいけない。
 
わしの危険受信アンテナが激しく電波をキャッチした。
 
 
 
 
 
ベジの背番号を順に並べてゆくと、

００　ドリンボ

１　わし

２　Ｊ

４　マコト

･･･
 
2人部屋だろうと3人部屋だろうと、わしがハズレくじから逃れることはできない。その事実を悟った瞬間、わしの防衛本能が覚醒した。遠くの方で誰かがこんなことをつぶやいているのをわしは聞き逃さなかった。
 
 
 
ベジの誰か「617号室って３人部屋だけど、マコトとちゃんたまの２人だけじゃん。」
 
 
 
 
 
これだ。
 
 
 
 
701号室の鍵を持ったわしは何食わぬ顔でエレベータに向かうと岩石標本のような笑みを浮かべた男がたずねてきた。
 
 
ドリンボ：「ハルオ～、俺ら何号室だっけ？？」
 
わし：「617～」
 
わしの発言を耳にしたちゃんたまが「え、ドリンボは僕たちの部屋じゃなかったですよ～」と汚物をなすりつけてこようとしたが、それについては完全に無視を決め込んだ。
 
 
 
 
 
晴れてわしは２人部屋に１人という超快適空間を手に入れた。圧倒的な勝ち組の権利を手に入れたわしはベッドに大の字に横になり感慨にふけっていること５分、入り口のドアからぶっきらぼうなノックが聞こえた。それはわし１人という爽やか素敵空間に別れを告げるお知らせであった。617号室に行ったはずのドリンボは、1人空きがあることには変わりがないにも関わらず、わざわざ701号室にやってきた。そしてよりにもよってとてつもない悪臭をまとって素敵空間を侵略してきた。その悪臭の発生源はヤツの装着するGAIAソックスから放出されており、もしその場にバイオハザードメーターがあれば確実に緊急隔離レベルを指し示していたことであろう。
 
その凶悪な足臭により意識が薄らいでゆく中で、わしは自分の身を守るために先手をうってやらねばならないことは何かと必死に頭を巡らせた。
 
 
そうだ、シャワーだ。
 
 
プラハでの１人ウォータースライダー事件の後のシャワーはとても入れた環境ではなくなっていたという前例があるため、わしは歯を食いしばってシャワールームの領域を死守した。
 
束の間の安息シャワータイムを満喫し部屋へ戻ると、入れ替わりでドリンボがシャワールームへ。
 
 
 
 
しばらく耳を澄ませていると。
 
 
 
 
 
 
 
ブシュシュシュシュシュ！！！！！
 
ブシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ！！！！！
 
 
 
 
 
 
 
やはり始まった。まるでイノシシたちのダンシングナイトのようなサウンドがシャワールームから響き渡った。わしは戦慄を覚えると共に、先に入っておいてよかったと胸をなでおろした。
 
しばらくするといたくご満悦の表情のドリンボがシャワールームから出てきた。その後わしは小便のためユニットバスのシャワールームに足を踏み入れると、そこはまるで映画・未知との遭遇であった。常識では考えられないほどの広範囲に水しぶきと陰毛が飛散しており、ぶら下がっているバスタオルはもちろんのこと、トイレのフタや、防水加工のシャワーカーテン、そして理解を超えることに天井付近の壁にまで陰毛が突き刺さっていた。１０分前までこの空間で何が行われていたのか、わしの貧弱な知能では想像することができない。
 
 
夕飯後部屋に戻ってくると、四年連合のユニの相談か何かの用件で日大のシュウヘイが部屋にやってきた。かれこれ１時間近く話した気がするが、全体的に彼の言動が安すぎたためかあまり記憶にない。ただ、「日大のレディーの子たちは、マッサージしてって言ったら渋々なりに結構やってくれるんですよ～」という発言に対してのみドリンボが異常なまでに興味を示していた様は覚えている。そして日大の子たちは、今後ドリンボに「マッサージして」と言われたら、マッサージしてあげてもいいが後で高額の振込みを要求することを忘れてはならない。
 
 
シュウヘイが去ってすぐに就寝の流れとなった。寝てる間、隣のベッドから布団が浮かび上がるのではないかと思われるほどの放屁が何度か聞こえたが、別に何とも思わなくなったあたりわしもたくましくなったなぁと感じるものである。
 
 
SFCでの朝錬で初めて顔を合わせてから、今年で10年になる。